新・薄口コラム(@Nuts_aki)

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



現職の政治家が「今回の選挙はとても大切です」というのは失礼だと思ったというお話

「今回の選挙はとても大切です。是非とも皆さんの一票を○○にお願い致します!」
授業をしていたら、目の前の駅の街頭演説が聞こえてきました。
細部にこだわる必要はないのかもしれませんが、僕はこの応援演説の言葉を聞いて、申し訳ないですがこの候補者だけは「無いな」と思ってしまいました。
この候補者の方は現職の参議院議員
前回の選挙で当選した方です。
今回初めて当選を狙っている人ならともかく、現職の参議院議員が「今回の選挙はとても大切です。」というのは、あまりに失礼ではないかと思ったのです。

「今回の選挙はとても大切です。」
「今回の選挙は」というような「は」の使い方をしてしまうと、当然そこには「前回と比べて」というニュアンスが出てしまいます。
従って、言外に「前回の選挙は大切でなかったけれど」という意味を含んでしまうわけです。
今回初めての当選を狙っているのなら、この言葉を使っても全く問題はありません。
しかし、現職の議員さんが「今回の選挙は大切」といってしまえば、そこには「前回自分に皆さんが投票してくれた選挙は大切でなかった」という意味が加わってしまいます。
つまり、「今回の選挙は」と強調してしまった瞬間、前回の選挙で自分に一票を入れてくれた有権者投票行動を無下にしたことになるのです。
もちろんこれを言った人にはそんな意図は微塵もないことでしょう。
そして、そんな一言をとってケチをつける人なんてほとんどいないのが実情でしょう。
そもそも大半はそんなこと気にも止めない。
しかし、実際問題として僕はどうしてもこの言葉に違和感を感じましたし、せっかく投票するのなら、そういう細部の一言、一文字にまで気を配り通せる政治家に投票したいと思ったというのが正直なぼくの気持ちです。
「てにをは」一つにまで気を配っている政治家さんは、やっぱり自ずと言葉に説得力を感じます。

元芸人で2000年に芸能界を引退した上岡龍太郎さんの「私が上岡龍太郎です」という登場文句。
或いは黒子のバスケに出てきた「赤司はエンペラーアイを持つから強いんやなくて、赤司がエンペラーアイを持つから強いんや」という台詞。
たった一文字でニュアンスが変わるという言葉選びの妙をつついた表現をみると、思わずグッと引き込まれます。
これは単に僕がそういった表現が好きだという好みの問題ですが、やはりそういった部分を意識した言い回しを選べる人は、教養があるように感じますし、どこか信頼できるように思います。
投票日は明後日。
もしかしたら明日、明後日で僕がみた某候補者はまた、僕の職場の最寄駅の前で演説をするかもしれません。
その時は是非、「てにをは」に滲むニュアンスまで意識して、100%自分の主張が伝わるようにして欲しいなあと陰ながら願ったりしています。
たった一文字で変わるニュアンス。
「伝えること」でご飯を食べている人間として、自分自身の言葉選びを意識させられた瞬間でした。

上岡龍太郎かく語りき―私の上方芸能史 (ちくま文庫)

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