新・薄口コラム(@Nuts_aki)

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



記録と記憶という人質

僕は仕事上複数の会社とやりとりするため、色々な連絡アプリを利用しています。

その中のひとつにChatworkがあります。

フリープランと有料プランがあるのですが、少し前まではフリープランだと作成できるグループ数に上限があり、現在は仕様変更があり、フリープランでは作成できるグループの上限が無くなった代わりに検索機能で遡ることができる期限がついています。

恐らくこの仕様変更は、初めに使いやすさを売りに利用者を増やし、ヘビーユーザーは多くのグループを作るので有料にせざるを得ないためそこで有料ユーザーを増やし、ある程度その戦略で頭打ちになる(そもそも上限以上にグループを作るようなハイクラスの囲い込みが終わる)タイミングで、今度はライトユーザー取り込みのために上限解除&検索制限にしたという意図なのでしょう。

因みにダウングレード(有料から無料への変更)は不可で、無料に戻したい場合は解約した後に新たに再登録が必要とのこと。

この、ユーザーの利便性ではなく利益追求を露骨に進めるやり方は僕は嫌いでは無いのですが(笑)、そんな露骨な経営戦略の中に、ふと今後の可能性が浮かんだので、今回はそれについてまとめたいと思います。

 

増え続ける記憶と記録という人質

 

「ダウングレード不可」というビジネスモデルを見た時、やはりそのモデルに進むよねというのが僕の第一の感想でした。

Google翻訳のカメラ機能は、Twitterでイジる以上の価値がある - 新・薄口コラム(@Nuts_aki)

これは僕が6年前くらいに書いた記事なのですが、当時何気なくGoogleドライブやGmailといったサービスを使っていた時に、「僕たちはこのサービスが明日から有料になったとして、"解約"という選択を取れるか?」という問いが浮かびました。

自分の現在の関係性あるいは思い出の大部分を蓄積している無料のサービスがあるとして、ある日そのサービスが有料になったら、僕たちは「関係性と思い出を保存するために一生上納金を払い続ける」か「そのサービスに頼っていた関係性と思い出を全て捨てて一から始める」かの選択を迫られるわけですが、その場合に自分は後者を選ぶのか、と。

ここでの関係性や思い出とは、プライベートなものばかりではありません。

それまで積み上げてきた仕事の記録ややり取りなども全て含みます。

例えば数年越しの仕事をしていて、そのログへのアクセスが不可欠な環境で、有料化に伴いリセットできるかどうかみたいなものもそう。

こう考えたときに、僕たちが今無料で使っているサービスのうち、実際に有料化されたとして「リセットできない」サービスはいくつあるかと考えたら結構な数になる気がします。

少なくとも僕はその手段でしか繋がりがない人がいるLINE、FacebookInstagram、ある程度の人数のフォロワーを抱えてしまっているYouTubeTwitter、note、ブログ、仕事や思い出のログを膨大に溜め込んでいるGoogleドライブ、様々なサービスの登録手続きに使用しているGmailあたりは解約することは不可能です。

仮に月額500円くらいなら、払わざるを得ないような気がします。

 

"FREE"経済の表と裏

 

 

2009年にクリスアンダーソンが発表して一躍話題になった『FREE〜〈無料〉からお金を生み出す新戦略〉』では、ウェブ界隈の急速な発展の先に生まれた「無料」文化の先にあるマネタイズ手法として、次の4つ(うろ覚えなのでざっくりですが...)が予想として書かれました。

 

①無料商品を広告に他商品を売り込む

②スポンサーを募って商品は無料提供

③一部の課金するヘビーユーザーと多数の無料ユーザーからなるフリーミアムモデル

④評判やファンという金銭以外の報酬の獲得

 

いずれもその通りで、実際にそういうサービスは多々生まれていましたが、クリスアンダーソンがこの本を書いて13年、個人的には今後、「暮らしと切っても切り離せなくなった段階での強制徴収」という無料サービスのビジネスモデルが生まれてくるように思います。

(正確には①無料サービスで全てを囲い込んでユーザーがそのサービスの中で暮らす「生活圏モデル」と、②暮らしの根底に居座った上で半強制的に徴収される「インフラ税金モデル」があると思っているのですが、今回は関係ないので置いておきます。)

チャットワークのダウングレード不可の有料化は、僕にとってその方向のサービスに出会ったひとつでした。

IT関連技術のおかげで広がりに広がった人間関係と思い出(記憶と記録)に月額いくらまでなら支払うかという思考実験。

あならならいくらまで支払いますか?

 

アイキャッチはもちろんFREE