新・薄口コラム(@Nuts_aki)

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



プロジェクトが回るかを判断する際に大事な「ハコ収益」という視点

昨年末から今年の前半にかけて、立て続けに新店舗やら移転やらプロジェクトの立て直しやらの話に関わることがあって、数字やデータと睨めっこという事が続いています。

僕個人は何かやりたい事ありきで行動するというよりは、成功可能性を検討してから動き出すみたいなタイプなので、どうしてもそういう話があると、まず実現可能性を考えてしまいます。

その観点からツッコミを入れるため非常に嫌がられるわけですが(笑)、半面だからこそ僕に話をしてもらえるのかなと思ったり思わなかったり...

広報や事業内容の観点からのマーケティングはもちろんですが、今回はそれよりずっと前の部分で案外見落としている人が多いなと思った損益分岐点周りの話をしていきたいと思います。

 

損益分岐点と操業停止点について

 

そのプロジェクトを続けるか否かの意思決定の指標の一つに、損益分岐点と操業停止点があります。

損益分岐点とは価格と平均固定費用と平均可変費用がイコールになる点(一個当たりの生産コストと料金が同じ場所)のことで、操業停止点は平均可変費用(一個当たりの原材料と料金がイコールの場所)とイコールになる点です。

損益分岐点を上回っていればとりあえず利益が出ますし、仮に損益分岐点を下回っていても操業停止点を上回っている限りは固定費用分の赤字は賄えます。

もちろん、もともと会社を回している人であれば、こんなことは当然なのですが、そうでない"半ビジネス"みたいなプロジェクトを回すにあたって、この辺の意識がすっぽり抜け落ちているということは珍しいことではありません。

初めから損益分岐点ギリギリの値段で強気の勝負をしたり、売るほど損をする物を強気で売り出したり。

好きな事を始めるのはどうぞご自由にと思うのですが、その際には損益分岐点をキチンと上回れるロジックを組めているかは必ず確かめるようにします。

 

「最低ハコ収容率」という考え方

 

損益分岐点と操業停止点に加え、僕はハコ収益率という観点を大事にしています。

ハコ収益率とは僕が指標を立てるために定義したもので、仮に総費用を賄うには会場やテナントを何%の集客で回す必要があるかという指標です。

[単位あたりの総費用/(客単価×収容人数×平均回転率)]というのがこの指標なのですが、これをもとに出たものを「最低ハコ収容率」とし、それを上回る集客の手立てが立つか否かを検討します。

客単価1000円、座席数10、平均回転数が6回×22日の飲食店の月あたりの総費用が70万円だとしたときに、最低ハコ収容率は53%となります。

この場合月平均で常に55%の重要率を維持できるロジックが検討基準です。

或いは客単価2万円、座席数30、平均回転率が2の塾(通塾日は固定でその学年にかかるため回転率は特殊)で費用が100万円の場合、最低ハコ収容率は83%となり、年間を通してこの生徒数が維持できる算段かあるか否かがポイントになるはずです。

 

減価率やビジネスモデル、立地など様々なものはありますが、「やりたい事主体」の人はまず理想ありきでプランを作るので、それを実現する難易度を体感で感じてもらう為、僕はこれをひとつの指標にしています。

 

成長期待を想定するための「最大ハコ収益」という視点

 

最低ハコ収容率に加えてもうひとつ、そのプロジェクトを最大で回した時にどれくらいの収益を生み出すかの期待度を考える指標として、僕は「最大ハコ収益」というものも大事にしています。

これはその会場なりテナントなりを運用した時に最大でどれほどの収益が見込めるか、裏を返せば現状のシステムでら(平均単価か回転数を上げない限り)「それ以上は期待できない」という上限を示す指標です。

先の例で言えば、前者の飲食店なら132万円、後者の塾なら120万円です。

中でプロジェクトを回す人にとっては、そこから費用を差し引いた額が、自分たちがそこで営むプロジェクトから得られる収益の限界値と考える事ができるでしょう。

 

別にぼくはこれをもって利益分配を考えようと言いたいわけではありません。

ただ、最低限行わねばならない努力と、努力が報われる限界値は知っておくべきだと思うのです。

特にやりがいで動く人たちはこういう部分に目を背けがちですが、片手間で行う事でない限り切っても切り離せない現実ですし、何より現実と腰を据えて向き合った方がより覚悟が決まると思うのです。

 

理想や想いの強さで人は行動しますが、理想や想いの強さで人は救えません。

やりがいベースで動くからこそ、動く前に現実を見据える事が大事だと思うのです。

そういう覚悟を決める手段として僕が使うのが「最低ハコ収容率」と「最大ハコ収益」です。

新たなプロジェクトを回そうという人の参考になれば幸いです。

 

アイキャッチは構造化のお話。