半年くらい前に後輩とご飯に行ったとき「どうやって先のこと予想するんですか?」と言うようなとを聞かれました。
ちょうど同時期にペアで担当し始めた生徒さんはがいるのですが、担当開始時に僕が言ったその子の成長の伸び率の予測が非常に近似していた事に驚いて尋ねてくれたとのこと(笑)
僕はわりかしどんなプロジェクトを始めるときでも、始める時点で大きな方向性や伸び方を予測して先に全て書き出したりということをします。
たとえばある広報戦略をとるとしたら、こういう形のコンテンツを作れば○○な人から××な反応を期待できるだろうみたいな。
或いは個別で担当する生徒さんならA君は初めのテストでx科目が上昇y科目は現状維持、次のテストでこれが反転、次の次には再びx科目が優位になるみたいな。
何かを見ると何でもかんでも今後の予想を離してしまうのは半分僕の癖みたいなもので、特に意識した事がなかったのですが、折角なので僕が未来予測をするときの思考の癖をまとめてみようと思います。
未来予測に必要な3つの視点
僕が何かを予測する際は、つねに次の3つの要因を大事にしています。
①本能、②ファンダメンタル、③価値観
この3点が正確に言語化できるとき、おおよそこらから起こるできごとを想定する事ができます。
①の本能とは人が生きている以上決して変わることのない部分みたいなものです。
人はお腹が空くと何かを食べたいとか、疲れると眠くなるとか、自分の子どもは愛しいとか(もちろん例外はあるかもしれません)
あえて定義づけするなら「人は自分の利害に対してどこまでも合理的である」という感じです。
まずこれに基づいて、個人単位で変わらない部分を考えます。
次に②のファンダメンタルについて。
これは現在の社会の流行や広がっているテクノロジーなどの要因に関する考察です。
例えばタブレットが広がると何ができるだろう?とか、親世代までスマホが広がると何ができるだろう?とか。
ある流行や技術が社会に広がったら、小さなレベルで言えば個人が技術や知識を習得したら何ができるだろう?という技術や流行から物理的に可能な範囲を割り出すと言うのが②の要素。
そして最後の③の価値観について。
ちなみに自分の予測の精度に関しては、ここの部分が強みなんじゃないかと勝手に思っていたりします。
価値観というのは、②の延長の話かもしれないのですが、ある技術や流行が一般化した世界では、現在の「当たり前A」と比べてその世界の「当たり前B」はどれくらいの差異があるだろうと言うのを考えると言う感じ。
例えば狩猟時代において重要なのはその日その日で確実に獲物を捕らえられる嗅覚や身体を持つものだったのに対し、農耕時代になると半年後の収穫を考えて目先では無く長期的に動けるものこそ重宝されるようになったみたいな違いが分かりやすいかもしれません。
前提が変動すれば、そこに生きる人々の考え方や行動様式は自然と変わる筈です。
その「価値観の差異」を計算に入れる事で将来の予測の精度が上がると思うのです。
3つの力の身につけ方
僕は10年くらい前に、社会に出るタイミングで今の生き方(複数の収入源と活動拠点があり、生活費は相対的に下げ、収入は全体の活動の3割で賄い、5割を投資に、残りはプライベートというイメージ)を選んだわけですが、それはまさに①〜③を考えた時に理想的な変動がこうであると思ったからです。
当時僕の中でそれらを考慮した時、今後a個人で生きやすい環境が整備された社会がきて、b個人の生きやすさを主張する人々が増え、cそれに憧れる人が増え、dそれが正しいと「思わなきゃいけない」社会がきて、eそれに疲弊する空気感の社会がきて、fそれに反発する社会になるのだろうなと考えていました。
そして、そんな社会で楽しく暮らすための選択として僕がとったのが今の生き方です。
結局僕の能力不足によって生活基盤の確立に時間がかかったり、大規模な災害などでその社会がやってくる期間が早まったりはしましたが、まあ概ね思った通りの動きをしています。
では、そんな①〜③の分析力を鍛えるにはどうしたらいいのかというお話ですが、これはそれぞれ、①には歴史と古典、②には現在のテクノロジーと時事問題、③にはSF小説が有効だと思っています。
①に関して重要なのは、時代や価値観が変わっても変化しない人の特性を捉える事です。
それに有効なのが歴史の繰り返しから人々の行動を学ぶことや、古典から何百年も変わらない特性や生き続ける知恵を知ることなのかなと。
そして②に関しては現在の正確な分析とその延長に想定できる物理的な実現可能性です。
この辺はユニクロの柳井さんやソフトバンクの孫さん、あとはいわゆるビジネス芸人的な経営者が上手い気がしています。
彼らは今ある技術や流行が物理的に可能な未来を語ります。
ほとんどの場合それが正確な未来ではない(そう思う理由は後述)のですが、現時点の分析という意味では非常に役に立ちます。
最後に③の価値観に関してはSF小説がむちゃくちゃ有効です。
硬派なSF作品には、さまざまな科学的な設定が存在します。
そこに描かれる人々は現在のわれわれの価値観では無く、その技術や風習が当たり前に広がった世界を生きる人々。
そのため、僕たちとは違う「当たり前」の行動を見せてくれます。
例えば「タイタンの妖女」に出てくる『徹底的に無関心な神の教団』の価値観が支配した世界では、「神は全能だがお前如きに興味はない」という価値観が当たり前の社会が描かれますし、例えばアニメ「PSYCHO-PASS」であれば、全ての人間の悪意が数値化し可視化できるのが当然の世界が描かれます。
そこには確かに僕らの価値観からしたら納得できないものでも、その設定の中で生きるならば極めて妥当な振る舞いや思考過程が描かれ、それゆえに「ある技術や流行が広がった世界」を相対化して想像しやすくなる働きがあるわけです。
先程、経営者が想像する未来は大体外れると書いたのですが、その理由はここにあります。
経営者が考える「その技術が物理的に可能な世界」は今の僕たちの価値観から見た「その技術が広がった世界」である事がほとんどなんですよね。
典型がベーシックインカムで、経営者的思考で考えるなら「嫌な仕事から解放される人が増えてハッピー」となるわけですが、SF的思考で考えると「仕事という「所属先」を失った人々は結局その無所属の不安と個人の選択による楽しみの追求の責任に恐くなり、所属するためにベーシックインカムで得たお金の大部分を従来よりひどい「会社」的組織に費やすだろう」みたいな。
最後が長くなってしまった上に、言ってしまえば過去、今、未来の勉強を怠るなという極めてつまらない結論になってしまうわけですが、結局はそれが将来を予測する上で1番有効なのかなと思っています。
別に僕の未来予測の精度が高いとは思いませんが、それでも聴いてくれた後輩にとってはそう見えたのだろうということで、あえて言葉にしてみました。
アイキャッチは僕がこの思考に至ったきっかけとなった岡田斗司夫さんの本