新・薄口コラム(@Nuts_aki)

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



具体例の引き出しと新卒での戦い方

僕は仕事柄、日々授業の中で子供たちに内容を伝えるために、いろいろな具体例を用います。
また、最近はコロナのおかげで飲みにはいけていないのですが、それまでは飲みが大好きで、しょっちゅう飲み屋のカウンターで始めて出会った人と話すというようなことをしていました。
当然その際は年や置かれている環境が離れている人と御一緒するのがほとんど。
そのため、そこでの会話は会ったタイミングでお互いの共通項を探るという形で成り立ちます。

先日、うちの塾でお仕事を手伝ってもらっている学生さんとお話をしているときに、「具体例が子供と共有できなくなってきた」という話になりました。
なんでも、「○○ってあるやんか?」と取り出した漫画や歌の具体例が生徒さんに響かないとのこと。
もちろんこの悩みは僕自身も学生のころに通ったことがあるので懐かしく思うと同時に、自分自身がある程度経験をつんでから改めてこの話題を聞くと、きわめて学生らしい悩みなんだなあという印象と同時に、これを逆手にとることで周囲から頭ひとつ抜けた、もっといえば新卒で活躍することができるスキルになるなと思ったので今回はこの話題を取り上げました。

具体例を引き出す上手さと2種類の引き出し方

学生さんの話を聞いているときに、僕は具体例の引き出し方に関して2種類の適切な具体例を引き出す上手さがあるなあと感じました。
その分類は次の2つです。
①内容に即した適切な具体例を引き出す力
②相手に即した適切な具体例を引き出す力
僕はそれぞれの人を①と②の有無で、a内容にも相手にもあった具体例を出せる人、b内容を適切に伝わるけれど相手がピンと来ない具体例引き出す人、c内容には合わないが相手のドンピシャの具体例を引き出す人、d内容にも相手にも刺さらない具体例を出す人の四つに分類しています。

このうち今回注目したいのはbのタイプ。
これは完全に主観ですが、いわゆる能力があるだとか周囲に評価されているけれど絶妙に周囲の評価を突破できない学生さんや新卒の人たちを見るとここに該当する人が多い印象。
というわけで、今回はなぜそうなるのかと、このカテゴリの人にはどういった戦略があるのかを考察したいと思います。

bタイプの武器と戦略

「内容を適切に伝わるけれど相手がピンと来ない具体例引き出す人」は往々にして自分が所属するコミュニティの中での人気者であったりします。
おそらくこれは属性の近しい人たちからの評価が高いことの裏返しでしょう。
bに該当する人たちは、内容を説明するに当たって適切な例を引用することが上手いため、そもそも属性の被りが大きなコミュニティでは非常に大きな評価を得ます。
逆に、ぱっと頭に浮かんだ最適解を半ば反射的に返してしまうため、その具体例や引用のバックグラウンドとなっている自身の経験との共有圏が少ない年や境遇が離れたひとには共感が得づらいわけです。

じゃあこういう人は頭に浮かんだ、自分の経験から導いたその場に最適な具体例を控えて別の言葉を探ることが大切かといわれれば、必ずしもそうとはいえません。
これは以前何かの番組でお笑い芸人の方が言っていたツッコミに関する分類なのですが、そこにいた芸人さんいわく、ツッコミにはパワータイプと技巧タイプがいるそうです。
パワータイプにはインパルスの堤下さんやブラックマヨネーズの小杉さん、おいでやすこがのおいでやす小田さん、サンドウィッチマンの伊達さんあたりが該当し、技巧タイプにはフットボールアワーの後藤さんや南海キャンディーズの山里さん、くりぃむしちゅ~の上田さんあたりが該当します。
前者は勢いと瞬発力でいくため、失敗することもあるけれどはまったときの爆発力は大きく、後者は問答無用に笑いに包むというタイプではありませんが独自の言葉選びによりコンスタントに笑いをさらいます。

僕は「具体例の引き出し方」にも、このお笑いにおけるパワータイプと技巧タイプがあるように思うのです。
これでいくと先に挙げたbタイプの内容を適切に伝わるけれど相手がピンと来ない具体例引き出す人は、パワータイプに分類されます。
ここにいる人は空振りする可能性はありますが、その大振りが大ヒットの可能性を持つわけなので、とにかく振り切ることが大切なわけです。
で、bタイプの人がスキルを持つと、自信が引き出した具体例が相手に刺さらなかったとき、瞬時に別のものに切り替えようとして立ち止まってしまう場合があります。
本人たちにとってはそれは相手を立てるための最善の対応策なのかもしれませんが、僕はむしろその具体例で走りきるほうがいいと思っています。
会話が盛り上がることにおいて重要なこととして、内容はもちろんですが、同じくらいにテンポや間が大切になってきます。
具体例でミスったと思って話を止めてしまうと、同じくらいに大切なテンポや間を犠牲にしていまうことになります。
その最悪な事態を避けるためにも、具体例が刺さらなかったときにそれを気にしてテンポや間を犠牲にするよりもそのまま突き進んだほうがいい。
むしろ持ち前の勢いで相手がピンと来ない具体例ですら飲み込んでしまうくらいのほうがいいのではないかというのが僕の考えです。

ちなみに瞬発力で切り出した具体例が相手に刺さらなかったときに咄嗟に柔軟に別の例を引き出す人もいますが、これはaタイプの人たち(先の芸人さんの例でいえばアンタッチャブルの柴田さん、千鳥のノブさん、博多華丸・大吉の大吉さん)なので、そもそもbタイプの人が即座に行おうとするものではありません。

というわけでここに該当する人がとるべき戦略としては、基本は瞬発力で具体例を引き出して、相手に刺さらなかった場合は勢いで引っ張りきるかその用いた具体例を面白おかしく説明して巻き込むかだと思います。
これができるとbタイプの人は世代を超えて受け入れられるし、かなり強い武器になるんじゃないかなと思うわけです。

 

アイキャッチは塙さんのお笑い論