マーケティングの凄さということで書くのであれば、パンテーンがゼロ年代に打ち出した「14日間チャレンジ」や、あえてクリスマスはうちを使わなくていいと書いたガストの広告など、記録しておきたいコンテンツはたくさんあるのですが、これらは以前触れた事があるような気がするので今回は後回しに。(あくまで今時点の思考をまとめたいので)
というわけで今回はくら寿司について触れていきたいと思います。
優秀な人間は課題解決を強みに変える
なにかと注目される西野亮廣さん。
映画や絵本、オンラインサロンで注目されがちな芸人さんですが、個人的に彼の最高傑作はハロウィン翌日のゴミ掃除のイベントであると思っています。
当時ハロウィンが盛り上がりを見せていた時、同時に翌日に廃棄されたままになる大量のゴミが問題になっていました。
その時に西野さんが打ったイベントが「ゴミを使ってアートを作ろう」というもの。
ハロウィンの翌朝にゴーストバスターを模した揃いの衣装に身を包み、ゴミを集めて渋谷の清掃をし、集めたゴミを使って一つの作品を作る。
僕はこの一連の設計をマジで面白いなと見ていました。
僕がこのイベントをみてすごいと思った一番のポイントは、ゴミを「いらないもの」から「なくてはならないもの」という解釈に転換した部分です。
僕は昔から[事象=事実×印象]と考えているのですが、この西野さんの企画は、「ゴミ問題」という事象を事実(ゴミがある)と印象(迷惑である)と因数分解した上で、印象の方を(なくてはならない)という好意的な要素に転換した事で、(ゴミがある)ということをポップなイベントに仕上げたものだと思うのです。
こういう印象の部分の転換で物事を好転させるあんが僕は大好きです。
くら寿司のわさびの戦略
西野さんのゴミアートと同じ戦略を取ったのがくら寿司のわさびです。
現在くら寿司で回ってくる回転寿司には全てわさびが入っていません。
わさびが欲しい人はテーブルに置いてあるものを自分でつけろというスタイル。
ほかの回転寿司でも概ね同じスタイルなので違和感がないかもしれませんが、実は昔はそうではありませんでした。
僕の記憶が正しければ、昔の回転寿司はサビ抜きとサビ有りの皿があり、それが同時に回転していました。
わさびが苦手な人はその中からサビ抜きのお皿を取っていた。
このやり方はわさびが苦手な人や子供に配慮した素晴らしい戦略だと思います(確かかっぱ寿司が最初?)。
ただ、反対に全ての商品にサビ抜きとサビありを作っていると考えたら、単純にコストが倍になっていると考えることもできます。
このロスはもったいない。
そう考えた時に最も有効な解決策は、すべてサビ抜きにして欲しい人だけ自分でつけるという方法です。
しかし、ただそれを導入して仕舞えば、今までわさびありを楽しんでいた既存ユーザーにとっては一手間増えるということでフラストレーションの発生要因になりかねません。
もちろんそんなこと気にする人がどれほどいるかと言われれば疑問ですが、理論的にはその可能性はある。
そこにきて出てきたのがくら寿司のわさびの提案です。
くら寿司のわさびの入れ物には「当店ではわさびの風味を味わってもらうために『あとのせ』という方法を採用しております」というような断り書きが書かれています。
僕はこれが凄いなあと思うのです。
「風味を楽しめる」というのは利用者にとっての価値になります。
と、同時に後の差ならば食品ロスが全て無くなります。
お店側の「サビあり/抜き」というコストを減らしたいという問題を「新鮮な風味を楽しんで欲しい」というポジティブな印象で解決しようとする手法が本当に優秀だと思うのです。
印象の転換で課題を解決するという手法
広報やマーケティングの課題解決は、必ずしもお金をかければいいというものではありません。
頭を使って工夫をすれば、案外既存の持ち札で驚きの解決策を生み出す事ができたりします。
それを考えるための手法が[事象=事実×印象]という公式。
渋谷のゴミ問題にしろくら寿司のわさびのお話はまさにこの、印象の部分の転換によって解決した典型例だと思うのです。
他にも身近な例で言えばファミマのワカメご飯とかも(ご飯の色艶の劣化をカモフラージュするために混ぜご飯にしていると同時に消費者には「わかめ飯」という付加価値で値段を上げている)
ある課題を見つけた時、要素分析して事実と印象を分けて、印象の部分に対するアプローチを探るという手法はさまざまなことに役立つように思います。
アイキャッチはビジネス臭が漂う前の西野さんが見られるこちら。