「動き出す時点で準備を終えておく」
これは僕が学生時代に何かを行うにあたって結構重視していた考え方です。
社会に出るまで学生の勝負は(というか、ノルマが定められたあらゆる勝負が)、構造的にスタートとゴールの瞬間が一緒であることが少なくありません。
こういった勝負をする際に僕が意識するのが事前準備です。
僕は仕事がら大学生の方と関わることが多い(かつての教え子や仕事を手伝ってもらっている子など)のですが、彼らからもらう相談で多いものの一つが就職活動に関するお話です。
「どんなことをすればいいのか」「エントリーシートに何を書いたらいいのか」「面接がうまくいかない」etc…
こういった相談を受けたときに僕がいつも話すのが冒頭に書いた「動き出す時点で準備を終えておく」ということだったりします。
少し話が飛びますが、自分が所属する塾で働く大学生の子で、僕に指導法についてのアドバイスを求めてきてくれる子がいる場合、僕は必ず「ノートを持ってメモをする習慣をつけよう」というお話をします。
これには指導面で次の二つの意図があります。
①情報を残すことで指導を点から線にする
②細かな部分に気づける「細やかさ」を身につける
①に関してはそのままなのですが、とにかく気になったことやその日の指導を何でもメモに残しておくことで、前回の授業を振り返ることができ、それにより指導に繋がりが生まれます。
それだけでもコツコツ積み上げれば、指導力としてはかなり変わってくるでしょう。
②に関しては間接的な効果を期待したものなのですが、メモを取る意識を持つことで、さまざまなことを言語化する意識を持つことが期待できます。
そしてその意識があると、今まで以上に細かな部分を意識するようになる。
この意識が磨かれるとほかの人が気づかないような子供の変化や、また教材の意図にも気づけるようになるわけです。
こうした効果を意図してノート作りのアドバイスをするのですが、学生さんに関してこのアドバイスをするのにはもうひとつ意図があります。
それが、「就活のときの大きな武器を仕込む」ということです。
たいていの学生さんが就職活動を始める段階で志望動機やエントリーシートを書く必要性に迫られ、自己分析を始めることでしょう。
そしてそのときに性格診断を行ったり、自分のしてきたことや強みみたいものを振り返ることになります。
しかしながら、そのときに思い返すのはかなり抽象化された、そして自身の認知バイアスにより美化された情報です。
もちろん本人の中では鮮明に思い出しているつもりでも、経験した時点ほどのリアリティは持ちえません。
そんなときに役に立つのが自分の活動や気づきがメモされ続けているノートなのです。
そこには、ノートをとり始めたときから今までの自分のリアルな子供との関わり、取り組み、気づきが残っています。
それらを時系列で振り返れば、自然とエピソードも自分の取り組みも強みも見つかるはずです。
何よりほかの人が「今」はじめた就職活動に関して、ノートをとっている学生さんだけはすでに準備が終わった段階から向き合えることになる。
まさに冒頭で書いた「動き出す時点で準備を終えておく」という戦い方です。
通常の授業での効果はもちろんですが、僕がもっとも狙っているのはここ。
仮に一日5分ノートに気づきをまとめていたとして、1回生のときから3回生の9月くらいに就活を意識したとして、5分×約900日=75時間分の自己分析を行っていることにあります。
しかもその内容にはその瞬間の感情や気づきが記されており、今から振り返るのとは質の面でまるで異なります。
そんなわけでこれがよく僕が学生さんに行うアドバイスだったりします。
もちろんそんな意図は聞かれたときにいちいち伝えませんが(笑)
別にノートにメモする癖をつけること自体は誰でもできることです。
それだけで就活が始まったときの武器がひとつ手に入ると考えるとお得じゃないですか?
もし共感していただける学生さんがいたら、実践してみてください。
きっと、数ヵ月後、数年後、就活の場になったときにその強さが実感できるはずです。
アイキャッチは体系理解がバケモノ級に上手い川上量生さんのこの本。