面白い会話とは、相手との共通の話題にどれだけ自分のエッセンスを散りばめるかである。
これが僕の持論です。
話し相手と一緒に盛り上がることのできる話題を持っていて、その上で話しながらそこに自分だけが持っている知識や経験の引き出しをお互いに開けていくようなやり方で進めていくと、大抵会話が盛り上がります。
だから、僕はできる限り人と一緒に盛り上がるための「共通文脈」としての話題と、自分しか持っていない珍しい情報ソースというのを意識して、情報を集めるように心がけています。
そんな僕がいろいろな話のネタ元として重宝しているのがオタキングこと岡田斗司夫さんがニコニコ動画で解説している番組です。
最近バタバタしていて追いかけられていなかったので、一気に溜まっていた分を見ていたのですが、その中でふと出てきた「芸人のキャラ問題」がとても印象に残りました。
きっかけは、視聴者からの「一昨年くらいからM1グランプリやthe・MANZAIがたまらなく感じるようになったのだが、その理由を言語化してほしい」という質問が来たことでした。
その時にトレンディエンジェルを引き合いに出して話した岡田さんの話がとても示唆に富んでおもしろいなと感じたのです。
岡田さん曰く、一昨年のM1やthe・MANZAIで活躍した芸人はキャラが面白い人で、去年の決勝に残った人は全員がネタの面白い人だったとのこと。
僕もこれには完全に同意で、一昨年はトレンディエンジェルやメイプル超合金といった、キャラが立っている芸人さんが評価され、実際にその後のテレビ露出も増えていたのに対し、去年は徹底的に「ネタ」が評価されているという印象でした。
僕はこの「キャラが面白いのか」それとも「ネタが面白いのか」という問題は、芸人に限らず一般の人にも当てはまると考えています。
一緒に話をしていて面白い人には、その人のキャラクター自体が魅力的な場合と、話す内容が面白いという2パターンがあるということ。
両者とも「面白い」には違いないのですが、キャラが面白い人とネタが面白い人とでは、明確にウケる場面が異なるように思います。
先日知り合いと就活について話をしていたのですが、その時にこと「キャラが面白いのかネタが面白いのか」問題に話が及びました。
一緒にいると大変魅力的で、共通の知人であるAさんが、明らかに優秀であるはずなのに、就活ではなぜかうまくいかなかったのはなんでだろうという話をしていたのですが、その時に結論として出て来たのが、Aさんはネタが面白いタイプであるということでした。
就活は短時間で自分の魅力を売込まなければならない以上、どうしてもキャラを意識的に押し出している人の方が評価される傾向にあります。
Aさんは話の引き出しは多岐に渡り洞察も面白いのだけれど、いかんせんキャラが分からない。
恐らく、あったばかりの人が数分話す程度では、「よく分からない人」という評価になってしまうのだと思います。
ちょうどトレンディエンジェルと真打ちのベテラン落語家を比較している感じ。
30分以上のネタでじわじわお客さんを引き込むような落語家さんが4分くらいの極めて短い時間で評価されたら、それは話の長いだけに見えてしまうと思うのです。
限られた時間の中であるならば、いかに一瞬で場の空気を自分のフィールドに引き込むかが必須になります。
そして、自分のフィールドに引き込む最大の武器が「キャラ」なのです。
就活では、極めて身近な時間の中で的確に自分の魅力を相手に伝える必要があります。
そうなるとやはり、キャラが面白いことが圧倒的に有利になる。
僕は就活で評価されているコミュニケーション能力なるものは、往往にしてキャラが立っているか否かということに過ぎないと思っています。
何時間も言葉のキャッチボールをするなかでジワジワ伝わってくるその人の魅力みたいなものは、そもそも就活という枠組みの中には測る指標がない。
結果的に極めて短い時間の中で相手に自分の魅力を伝える必要が出て来て、それをするのに重要なものが「キャラ」なのだろうと思うのです。
周囲からの評価は高いのに就活で苦戦する人は、十中八九ここに原因がある。
※ここで強調しておきたいのが、「周囲からの評価が高い」ということ。自分で周囲からの評価が高いと思い込んでいる人はここには該当しません。
就活がその構造上、ネタよりキャラが重視されるのであれば、その市場に入っていく際に自分の「キャラ」を立たせなければ仕方がありません。
僕自身、塾の先生をしているので、キャラを立てるということは常々意識しています。
キャラを立てるのに最も重要な視点は、他の要素を捨てていくこと。
あれも伝えたい、これも伝えたいでは、結局相手に自分像が伝わらなくなってしまうのです。
どんな話題でもハゲという自虐が流れているトレンディエンジェルは、やっぱり見ていてどんな人かというのが伝わってきます。
この、根底に流れるイメージこそがキャラで、それを明確にすることと、アピールする内容の根底に、そのイメージが脈々と流れている。
こうなって初めて面接官に「らしさ」が伝わるわけです。
いろいろなネタを持っている人ほど、こんな自分も知ってほしいと思ってしまいがち。
しかしそれは伝える側のエゴで、受け手は「要するにどんな人?」を求めているわけです。
少なくとも就職活動においては構造上そうなってしまう。
であるならば、たとえネタが面白いタイプの人であっても、ある程度はキャラで戦う他ありません。
キャラとは他の要素を捨てること。
この意識を持ってセルフマネジメントができれば、就職活動はそれほど大変でないどころか、比較的優位に進められはような気がします。
アイキャッチは「耳で感じる斎藤さん」