エントリーシートの中でたいていの人が真っ先に悩むのが、自分の強みや成功経験(あるいは失敗経験)です。
「そんなアピールできるようなエピソードや経験なんてしていないし…」なんて声をよく聞きます。
自分をアピールなんていうと、凄さを強調しなければいけないように思ってしまうかもしれませんが、PRで求められていることは凄い経験や学生時代の成果ではありません。
就職活動の自己PRにおいて、人事の人は別に「すごい人」自慢を求めているわけではないのです。
自己PRで求められているのは、その人の「人物像が分かること」です。
アピールとは自分の凄さや特異性をアピールすることではなく、自分がどんな人物であるかを相手に伝えることなのです。
試しに二つほど、自己PRのプロットを考えてみました。
以下の二つを見比べてみてください。
(ざっとプロットだけ書いたので非常に薄い文章になってしまいましたが、その点は目を瞑っていただけると幸いです。)
A「私の強みはリーダーシップがあることです。学校生活ではゼミ長をしていて、アルバイトでは周囲の信頼を得てチーフを務めました。ゼミ長とチーフを兼任することは正直大変でしたが、周りの支えもあって両立することができました。こうした経験から、私はリーダーとしての必要なことをたくさん学びました。」
B「私は現在、祖母の家から大学に通っています。祖母の家に住まわせてもらうにあたり、朝ごはんは私が作ると決めました。祖母は薄味が好きで、また歯が弱いこともあり、私とは好みが違います。毎日朝ごはんを作るうちに、私は相手の好みを意識することの大切さを学びました。私の強みは相手の視点に立って物を考えられる点だと思います。」
AとBの文章では、どちらのほうがその人の人柄が伝わるでしょうか?
また、Aはリーダーシップが強みで、Bは人の立場で物を考えるということが強みというアピールですが、どちらのほうが説得力を感じたでしょうか?
おそらくBの方が強みに説得力があり、どんなひとであるのかも伝わったことと思います。
Aに書かれている経験はゼミ長とバイト先でのチーフという「肩書き」です。
それに対してBに書いたのはただの日常の風景。
経験の「凄さ」でいうのならば、比べるまでも無くAが優れていますが、アピールとしてどちらが伝わるかといわれた場合、Aの方が優れているとは言えません。
このように凄い経験をしていることがいいPRであるわけではないのです。
(もちろん大学で中国語を頑張った結果、中国の国家主席と会食したとかみたいな「尋常でない経験」であれば話は別ですが。。。)
たとえば目の前に料理をロクに作らない素人が丸焼きした超高級な素材を使った料理と、一流の料理人が調理したスーパーで半額になっている食材で作った料理があったら、どちらを食べたいか考えてみてください。
ほとんど全員が後者を選ぶはずです。
どれだけ高級な素材であっても、調理の仕方が下手であったら台無しです。
逆に素材はたいしたこと無かったとしても、調理の仕方が素晴らしければいくらでも美味しくなる。
自己PRに関してもこれと同じことが言えるように思います。
自分の強みを考えるにあたって「書けるような経験が無い」と悩む人は、素材が命だと思っている。
もちろん、いい素材であればそれに越したことはありませんが、重要なのは素材そのものではなく、素材を通していかに自分を伝えるかという、その「見せ方」です。
ちょっとした経験であっても、その見せ方はいくらでも変えられます。
何気ない日常の風景でも、自分をアピールすることは十分にできる。
逆にせっかく面白い経験を持っていたとしても、その見せ方がありきたりになってしまえば、面接官の心にまったく刺さらないものになってしまいます。
「留学経験」をもとにしたPRをよくみますが、留学で学べることは語学力やコミュニケーション能力だけはないはずです。
留学経験を素材に語学力をアピールするなんて、A5ランクの霜降り肉でカレーを作るようなもの。
考えればいくらでも別の切り口が見えてくるはずです。
自己PRを考えるときには、こうした素材(自分の今までの経験)を通じて何を伝えたいかを考えることこそが重要なのです。
どんな視点で自分の経験を語るか。
自分のアピールしたいポイントに合わせて、いろいろな切り口から、素材を調理することが大切です。
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