新・薄口コラム(@Nuts_aki)

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



高校生を悩ます「である」ことと「する」事はおばちゃんのダイエットに例えると分かり易い⑩「価値倒錯を再転倒するために」

最終段落は「ラディカルな精神的貴族主義がラディカルな民主主義と内面的に結びつく」の説明から入りたいと思います。
まあメンドクサイいい回し(笑)ではあるのですが、ここまでの内容を踏まえれば、それぞれが何を指しているのかを汲み取ることは可能です。
まずは言おうとしていることが掴みやすい「ラディカルな民主主義」を説明します。
根源的な民主主義とはなにか?
筆者は「である」ことと「する」ことの冒頭で、民主主義とは不断の努力によってのみ手に入るものと言っています。
そこから考えると、丸山さんの言う「ラディカルな民主主義」とは、本来「する」価値観で運営されているはずの制度を主体的に絶えず監視する姿勢を持つことであるといえます。
では、「ラディカルな精神的貴族主義」とはなにか。
「ラディカルな民主主義」が「する」論理の中で本質的に重要なものを指していたのであれば、「ラディカルな精神的貴族主義」とは、「である」論理の根っこにあるものだと考えることができます。
「である」論理で動くものの本質を述べているのは第7節と第8節です。
そこに書かれていたのは「教養」は効率やどれだけ生産したかという数字では測れないということ。
これが「である」価値観における根源的な部分です。
そしてここでいう「精神的貴族主義」とは、高い教養を持ち、自らを律する人のことと考えられます。
「ラディカルな精神的貴族主義」とは、「である」論理の中で高い教養を備えた人のことを指しています。
こうしたことを踏まえて上の「ラディカルな精神的貴族主義がラディカルな民主主義と内面的に結びつく」を言い換えたら「本当の意味での教養を持った人間が、本来する論理で動いているはずの政治のような分野を絶えず監視しなきゃいけないよね」っていうことになります。
「である」論理の中で培われた文化の側が耐えず監視することで、本来は「する」論理で動くべき政治等の分野が正しく「する」論理で運用されるというわけです。
こうした姿勢を意識することで、急速な近代化によって生まれてしまった日本の「である」論理で動くべき分野に「する」価値観が浸透して、「する」論理でのみ評価されなければならない分野で「である」論理が強靭にはびこっているという矛盾が解消されると筆者は述べています。

最終段落はたった400字しかないのですが、これまでの内容を把握していることと、まとめに入った筆者の論理展開をしっかりと追う必要があります。
そこが最終節の理解を妨げる一番の原因になっています。
この節を理解するためにはまず「『する』価値と『である』価値との倒錯』」を理解しなければなりません。
その上で、「ラディカルな精神的貴族主義」と「ラディカルな民主主義」を把握しなければならない。
この3つの一つでもよく分からない部分があると、この文章はつまずいてしまいます。
不安な人は是非その不安な要素が説明されている単元に戻ってみてください。

おわりに
丸山真男さんの「『である』ことと『する』こと」は、正直批判も少なくない作品です。
しかし、そこで指摘されていることは至極まっとうで、これから社会へ羽ばたく人々が(丸山さんの意見に賛同するかは別として)意識しておかなければならないことだと思います。
なにより1961年に発行された「日本の思想」という本で指摘された内容が、未だに通じるどころか、むしろ強化されているという現状と正しく向き合う絶好の機会を与えてくれる文章だと思います。
しっかりと噛み砕いてこの文章を読むと、単にテストのためにこの文章の勉強を「する」のではなく、どこかで、何かのきっかけで人生の肥やしになり得る文章ではないかと思います。
そんな想いがあって、この「『である』ことと『する』こと」を説明しました。
まずは多くの人から拒否感をとっぱらわなければならないと思い、冒頭はとにかくキャッチーであることを重視しています。
そのため、理解している方にとっては「全然違うやん!」というご指摘があると思います。
そうした批判を覚悟の上で、それでも直感的に第一印象におけるハードルを取っ払うためにこのような説明の構成にしました。
僕の大好きな漫画家山田玲司さんは、自身のヒット作「Bバージン」の誕生秘話として「自分の主張は消費税分(当時は3%)、残りは読者に喜んでもらえるように」と言っています。
今回の説明はまさにその言葉を常に念頭において書いたものです。
整合性や正しさよりも直感的な触れやすさに振れた解説であるということで、説明のほころびに関してはご容赦いただけたら幸いです。

 

アイキャッチ丸山真男さんの忠誠と反逆 

 

忠誠と反逆―転形期日本の精神史的位相 (ちくま学芸文庫)

忠誠と反逆―転形期日本の精神史的位相 (ちくま学芸文庫)