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こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



「『である』ことと『する』こと」を宝くじに例えて3分で理解する【UG】10000万字補足付き

これまで多くの高校生を悩ませてきた、丸山眞男さんの『「である」ことと「する」こと』という作品。

僕のブログで挙げていた解説記事の中でもトップクラスのアクセス数でした。(後で全記事のURLものせます)

全部で1万字ほどの説明だったのですが、テスト直前では中々全部の記事を読むのは難しいのかなあと思います。

おそらく高校生でこの記事にたどり着いた人は、

①あの文章を直感的に理解したい

②テストに出そうな場所を説明してほしい

の2択ではないかというのが僕の想定。

というわけで、今回は①の方を意識して、勉強の導入に生かすことを意識した、出来るだけ直感的に分かりやすい要約をしてみようと思います。

・「権利の上に眠る者」が分からん

・プティングの例は何?

・ラディカルな転換?

という人はぜひお読みください。

 

「権利の上に眠る者」は宝くじに置き換えて考える

 

まずはこの作品の最初の関門「権利の上に眠る者」について。

「権利の上に眠る者」が分からない人は宝くじに当選した場合を想像して下さい。

あなたは宝くじで1万円が当選しました。

でも今は試験中。宝くじ売り場に行くのも手間なので、まあ後で換金しようと考えています。

試験が終わっても体育祭や部活動の大会、入試などがあってなんだかんだ後回し。

そうこうしているうちに1年後、あなたは大学に入学しはじめての一人暮らしで生活が厳しくなり、ふと宝くじの存在を思い出します。

そして換金しに宝くじ売り場に。

すると「その宝くじは期限切れなので1万円は渡せません」のひと言が。

 

「権利の上に眠る者」の仕組みを非常に端的に言えばこんな感じです。

人々が貴族や権力者から頑張って勝ち取った「権利」というものは、一度手にしたからといってずっと手元にあるとは限らないから常に確認が必要だよねというお話です。

『「である」ことと「する」こと』は、ここを出発点にして、「ところで日本は、海外では市民が努力して勝ち取った権力がある日突然やってきたから『権利は守らなきゃ無くなる』って意識少なくない?」という話に進むわけです。

 

「プティングの味は食べてみなければ分からない」の例が表すものは何?

 

あるテスト終わりの昼下がり。

あなたの目の前の机には、たっぷりの卵を使って作った、プルプルの台形の物が丸皿に乗っているとします。

横には紅茶と小さな銀のスプーン。

何の迷いもなくそれを口にいれたら、口に広がるのは出したほんのりとした塩気。

それはあなたの妹がいたずらで置いておいた茶碗蒸しだったのです。

 

例えばこんないたずらのシーンを考えて下さい。

おそらくあなたは口に入れたその瞬間までその卵の蒸し料理をプリンであると疑っていなかったはずです。

形も場面も置かれているものもどう考えてもプリンのシチュエーションだから。

でも、全く同じ光景だとしても、そこにあるのはプリンとは限りません。

あなたはそのいたずらに激怒すると思うのですが、そもそもその怒りは「目の前のものはプリンである」と信じ込んでいるから生まれるもの。

もしも「それはプリンか?」という疑いが頭にあれば、口に入れた瞬間「はいはいいたずらね」と寧ろ悪戯を仕掛けた妹の甘さを感じて余裕と優越感から落ち着いた対応をすると思います。

 

この、「目の前の物を〈○○である〉と思い込まず、毎回確認する意識を持とう」というのがこのプティングの例が言いたいことな訳です。

これは「権利」の話と繋がります。

「一度手にした権利はずっとそのまま手元にあると思わず常に守り続けなければならない」が「プティングは毎回食べてみて確認しよう」となるわけです。

そしてこの「目の前のものはプティングだ」ということと「目の前の物がプティングか確認しよう」がそのまま「である」ことと「する」ことへとつながります。

 

「ラディカルな転換」とは何?

 

話は一気に最終部へと飛びますが、最後はラディカルな転換について。

「ラディカル」とは〈急進的な〉や〈根本的な〉と言った意味になります。

丸山眞男さんは、日本はその歴史のせいもあり、本来「すること」で評価される分野にまで「であること」の評価が入ってきてしまっているということを問題点として指摘しています。

(例えば「内容を理解すること」が目的の宿題なのに「宿題を出したこと」で評価されるとか、「大学でどんな勉強をしたのか」が大切なのに「大学名で評価される」とかはみなさんにも直感的にわかりやすいかと思います)

 

こうしたおかしな状態を治して、「すること」の社会は「すること」で評価されるようにしなければいけませんよね。

今こそ日本人の根本に染み付いている「である事」での評価を「する事」による評価に変えていきましょう。

この意識の「根本的な」変化の必要性を丸山眞男さんは「ラディカルな転換」と述べているわけです。

そもそもこの『「である」ことと「する」こと』という作品は『日本の思想』という本に収録されたもので、日本人の考え方について論じたものの一部を採用しています。

そのため、考え方を根本的にひっくり返そうという結論に落ち着いているわけです。

 

というわけでよくある疑問を1トピック500字前後で説明してみました。

テスト勉強の導入で役に立つようにあえて厳密性を削った部分もあります。

だから、「それ正確にはちゃうやん!」というツッコミはご遠慮下さい。笑

みなさんの勉強に少しでもお役に立てたら幸いです。

 

〈付録〉『「である」ことと「する」こと』10000字解説

今回は「直感的に分かりやすく」をコンセプトに書いたので、本文内容は1500字程度で内容もコアだけを押さえてかなりざっくりした形にしましたが、もっと詳しく読み込みたいという人もいると思います。

そこで細かく知りたい人用に、僕が過去に書いた『「である」ことと「する」こと』の記事を添付しておきます

よかったらこちらもご活用下さい。

高校生を悩ます「である」ことと「する」事はおばちゃんのダイエットに例えると分かり易い① - 新・薄口コラム(@Nuts_aki)
高校生を悩ます「である」ことと「する」事はおばちゃんのダイエットに例えると分かり易い②「権利の上に眠る者」 - 新・薄口コラム(@Nuts_aki)
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アイキャッチは『日本の思想』